フラマンヴィル原子力発電所 EPR(第Ⅲ世代欧州加圧水型原子炉)

10月15日午後3時、フラマンヴィル原子力発電所に到着しました。湾の対岸には、ラアーグの再処理工場が白く薄らと見えていました。

福島の事故以来、わが国では、原子力政策の在り方が抜本的に見直されようとしております。より安全で、より経済的。この二つの相反するとみられる課題をどのように克服するのか。日本の取り組みが試されています。

まず、フラマンヴィル原子力発電所について説明いたします。

現在、130万kwの2基の原子力発電所が稼働中です。1985年と1986年に運転開始しました。4基建設可能で、残りの2サイトの一つにEPRを建設中です。運転開始は、現時点で、2016年を目指しております。
フランス電力(EDF)が運営し、692名が社員、約200名が協力会社の社員です。
フランスでは、19サイトに58基の原子炉があり、そのうち5サイトが海沿いにあります。(残りは川沿い)
増設可能なサイトはほとんどありませんが、ここフラマンヴィルは、空きスペースが2基分あり、そのうちの一つに(3号機)建設中です。後、1基、増設可能です。ここでの建設は、新たな土地を探す必要がない分、比較的短期間で建設可能です。
EPRは、2007年2月に工事が開始されました。
165万kwの世界一の発電所となります。
2005年当初、建設費は、€33億と見積もられていましたが、現時点では、€60億(6000億円)となる見込みです。
このEPRは、今後始まる、古い原発の建て替え時のモデルとなるため、既存の原子炉廃炉の前に稼働している必要があります。そのために、急ピッチで建設されていますが、安全性は、最優先課題であり、コストアップの要因のひとつとなっております。

(このまま、原子炉をリプレイスしなかった時の現時点での年間発電量予測)

フランスにある原子炉は、1977年から稼働し始め、20年間で35基の原子力発電所を建設しました。それらは、既に稼働から、40~50年経過しており、建て替えの時期を迎えている原子炉が大量にあります。
フランスの原子炉はすべて加圧水型です。

これら、58基のこれまでの知見が全て、EPRに反映されます。安全性、環境問題、技術の分野において改善が施されております。

EPRは、フランスとドイツで共同開発しました。フランスでは、2003年、エネルギー政策法の制定に向けた全国規模のエネルギー公開討論が5つの都市で7回にわたって開催され、2005年にエネルギー政策法で、国内初のEPRを建設されることが明記されました。

その後、EPR建設に関する全国規模の公開討論会を開催、その結果を踏まえ、フランス電力がフラマンヴィル原子力発電3号機として建設を正式決定。公衆意見調査が行われ、2007年、原子力安全機関(ASN)が設置許可について肯定的な見解を表明、同年4月11日付で設置許可政令が発給されました。
特筆すべきは、炉心溶融防止システムや、炉心溶融が発生した場合の影響を軽減する技術等が採用され、高い安全性が確保されているということです。

フランスの原子炉は、安全性の確保に、これまで力を注いできました。
アメリカ、スリーマイル島の事故後には、冷却できずに炉心溶融が起こった時のため、コリウムの受け皿を設置。9.11(同時多発テロ)後には、飛行機の衝突に耐えられるように改良され、昨年の福島の事故後にも、フィヨン首相の要請により、ASNが実施している補完的安全評価(ECS)では、フラマンヴィル3号機も対象となり、新たな対策が施されました。

① ディーゼル発電機4基
② 緊急用ディーゼル発電機2基
③ 16.5mの堤防(再計算)(敷地は12m)
④ 耐震性の見直し(元々、EPRは、要求が高かったので見直しは無し)
⑤ 冷却用の大きな淡水層を高台に設置(60m)

更に、これらの非常用ディーゼル発電機が稼働しないときのために、即応部隊が、2時間以内に非常用電源をヘリコプターで運ぶ仕組みになっています。

最後に、経済効果について説明がありました。
フラマンヴィル原子力発電所3号機の建設にあたっては、資材や建設のため。150以上の契約が成され、3000人以上が建設工事に従事し、50%は、地元雇用。工事は2007年から開始しましたが、雇用は、2005年からで、工事前2年間は、研修に充てられました。

今後も、必要であれば様々な改良が随時加えられ2016年の運転開始を目指します。

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