高速増殖炉「もんじゅ」

平成19年12月20日

福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」を視察してきました。
「もんじゅ」開発の柳澤特別顧問に、ご案内いただきました。

「もんじゅ」は、原子燃料サイクルの柱となる次世代型原子炉です
青森県が、核燃料サイクルを推進する上で、必要不可欠な技術です
独立行政法人「日本原子力研究開発機構」(H.17.10.1設立)が運営しています

原子力発電所では、燃料としてウランを使います
ウランには、燃料となるウラン235が0.7%燃料とならないウラン238が99.3%含まれています
現在の原子力発電所のように、ウラン235だけを使っていると、燃料がなくなってしまいます。(現在、世界各国で数十基の原子力発電所を新規に建設予定しているため、燃料のウランは高騰しています)
ウラン238は、中性子を吸収すると燃えるプルトニウム239に変わり、新たな燃料とすることができる
プルサーマル発電(大間原子力発電所)では、ウランを1割以上、高速増殖炉では、数十倍も有効活用
高速増殖炉は、プルトニウムを燃料として利用しながら、ウラン238を効率よくプルトニウムに変えていく原子炉です
高速増殖炉が実用化されれば、ウラン全体を燃料にでき、数千年にわたりエネルギーが確保される
「もんじゅ」は原型炉であり、発電プラントとしての働きや大型化への技術的な可能性を確認するための原子炉です。発電を行いながら、いろいろなデータを取得し、高速増殖炉の開発に役立てられる

なぜ必要?
1. 将来のエネルギー資源を確保するため
エネルギー資源は、現在の使用量のままでは、石炭を除いておよそ半世紀で使い切ってしまいます
一方世界の人口は増え続け、2050年には約90億人に達すると予測されており、エネルギー需要も著しく増大することが予想されます
高速増殖炉は、電気を作る傍ら、現在ほんの一部しか利用されていないウラン資源をプルトニウムに変えて有効利用します
実用化によって数千年のエネルギーが確保されます

2. 日本のエネルギー資源の輸入量を少なくするため
日本は、エネルギー資源の80%以上を輸入に頼っているため、世界情勢が不安定になるとエネルギー資源が輸入できなくなる可能性
高速増殖炉が生み出す準国産エネルギーとしてのプルトニウム燃料を利用することが必要
3. 地球環境を保護するため
石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料は、燃やせば多くの炭酸ガスを出し、地球からの熱を逃げにくくし、地球温暖化の原因となります
酸性雨のもととなる硫黄酸化物や窒素酸化物を出すため、それらを除去する装置を設置する必要があります
高速増殖炉を含む原子力発電所は、炭酸ガスや硫黄酸化物、それに、窒素酸化物をほとんど出さない環境に優しい発電方式です
原子力発電の使用済み燃料を再処理して出てくる高レベル放射性廃棄物は、安全に貯蔵管理し、処分する必要があります

「もんじゅ」のしくみは?
燃料のプルトニウムが核分裂して発生した熱を取出したり、燃料を増やすため、ナトリウムを使用します
発生した熱は、ポンプで循環されるナトリウムに伝えられます
これを1次系ナトリウムと呼び、その途中にある熱交換器でその熱は、次の2次系ナトリウムに伝えられます
2次系ナトリウムもポンプで循環されており、その熱は、蒸気発生器で水に伝えられ、蒸気を発生させます
その蒸気によってタービンを回し、発電機で電気が起こされます

ナトリウムとは?
ナトリウムは、食塩からつくられます
室温では固体で、約100℃で溶け、約880℃で沸騰する性質があり、熱をよく伝えます
約500℃で運転する高速増殖炉では圧力をかける必要がなく、低い圧力で運転できます
一方、ナトリウムは、酸素と反応し、空気中では約300℃以上で燃えます
また、水と激しく反応し、水素を発生し、酸素があれば燃えることもあります(場合によっては爆発的に燃えることもあります)
鉄などを腐食する水酸化ナトリウムなどができます
1995年12月にナトリウム漏れ事故が起こりましたが、対策は?
配管などからの僅かなナトリウム漏れも検出器が見つけられるようにしています
放射性物質がある1次系ナトリウムの部屋は、窒素ガスで満たしており、ナトリウムは漏れても燃えないようにしています
建物等の水分を含むコンクリートと、漏れたナトリウムが直接触れないように、部屋の表面に鉄板を張っています
放射性物質がない2次系ナトリウムの部屋は、空気があり、大量に漏れた時は、傾きをつけた床の鉄板を流れて、垂直の配管を通って下の部屋の半密閉の蓋の下に入り、窒息消化され、燃焼は少量で収まります
蒸気発生器での、ナトリウム・水反応対策は?
蒸気発生器の伝熱管の中を流れる水や蒸気が万が一まわりのナトリウム中に漏れた場合には、水素が発生し圧力が上昇したり、腐蝕力のある水酸化ナトリウムが生成されます
そのため、わずかの漏れも水漏れ検出器で素早く見つけて運転を止め、それ以上の漏れを防ぎます
また、漏れの量が多い場合には、水素によって圧力が高くなり、ある一定の圧力で敗れる薄い板が開きます
そして、水素などは配管で収納容器に導かれ圧力を下げるとともに、圧力開放版からの信号で原子炉は、自動停止します

1995年のナトリウム漏えい事故から13年、運転再開に向けた取組みが行われておりましたが、検知器の異常で総点検を実施、国は、立ち入り検査する考えで、2008年10月運転再開は?

原油高騰と地球温暖化防止対策
自国のエネルギーを確保するため、世界各国で、原子力発電が見直され、これから、原子炉の建設ラッシュが続きます。 その中でも、次世代原子炉が注目を浴びております。
一度使った核燃料を、再処理して、何度でも使う原子燃料サイクル。
その中核を成すのが、高速増殖炉です。普通の原子炉の数十倍の効率で、ウラン燃料を使います。
その原型炉の「もんじゅ」が担っている責任は、とても重要です。
トラブル情報は、徹底的に公開し、開かれた施設にしていかなくてはなりません。
「もんじゅ」の運転再開は、日本のエネルギー政策の要になるのです。 ケッパレー!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)