長崎の教会群とキリスト教関連遺産

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産登録に向けた取り組みを調査してきました。

20130206-1

国の文化審議会からの課題を踏まえ、次の3点を重点項目として取り組んでいます。

①    顕著な普遍的価値の証明

・コンセプトの明確化

・構成資産の充実と精査

・類似の世界遺産との比較研究

②    国内における万全の保護措置

・文化財の国指定、国選定への昇格、新規指定

・文化財の保存管理計画等の策定

・文化財の緩衝地帯(バッファゾーン)の設定

③    登録前からの適切な公開、活用の検討

特に、普遍的価値の証明は最重要であり、先に登録された平泉は、良い先例となっているのではないでしょうか。

長崎県では、キリスト教の伝播と浸透のプロセスを世界遺産としての価値づけの中心としています。

Ⅰ、Ⅱ期は、キリストの伝来と繁栄

Ⅲ期は、キリスト教の弾圧と禁教下のキリシタン信仰と「かくれキリシタン」

Ⅳ期は、250年もの長期にわたる潜伏からの「奇跡の復活」(大浦天主堂における信徒発見)と信徒発見後の教会堂の建設

以上のⅣ期に分け、数ある資産から13に絞って構成資産としました。

20130206-2 20130206-3 20130206-4 20130206-5 20130206-6 20130206-7

20130206-8 20130206-9 20130206-10 20130206-11 20130206-12

これらの絞り込みも、世界遺産登録に向けた重要なプロセスであり、地域間の調整が難しい中で行われました。県民の理解が最も不可欠なプロセスでした。

年々、世界遺産登録のハードルが高くなっている現状では、長崎県の取り組みは、青森県の参考となるのではないでしょうか。

日本初の「かくれキリシタン」という日本語が世界標準となることを切に願っております。

平成23年2月23日、長崎県議会は、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」 の世界文化遺産への登録実現に関する決議を採択いたしました。高いハードルをクリアするためには、県当局を始め、県民一丸となった取り組みが必要です。

//////////////////////////////////////////////////////////////////

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界文化遺産への登録実現に関する決議

 

世界文化遺産は、顕著な普遍的価値を有する文化遺産を人類全体の「たからもの」として、損傷、破壊等の脅威から保護、保存するために、「世界遺産条約」に基づき選定登録されるものである。

世界文化遺産は、条約国がそれぞれの国の世界遺産登録候補をユネスコの世界遺産暫定一覧表に登載し、専門家の調査やユネスコ世界遺産委員会での審査を経て、登録される。

現在日本においては、11件の世界文化遺産が登録されており、また文化遺産の暫定一覧表には13件が登載されている。

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、世界史に類を見ない250年に及ぶ長期の潜伏を経て復活した我が国のキリスト教布教とその受容の歩みを示し、また、和洋の建築技術の融合、優秀な自然環境と一体となった文化的景観など優れた価値を持つことから顕著な普遍的価値があり、世界遺産として登録されるにふさわしい文化遺産であると考える。

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が持つ文化的価値が世界に認められることは、長崎県の誇りとなるものである。また、この世界文化遺産への登録により、県民において、貴重な文化遺産を大切に守り伝えていこうという、より一層の意識の高まりが期待できる。

さらに、構成資産候補は、五島列島をはじめ県内に広く分布しており、これら構成資産候補を活かした地域づくりによって交流人口の拡大などの地域活性化が期待できる。

よって、国、県当局におかれては、平成26年のユネスコ世界遺産委員会での審査・登録を目指し、構成資産候補の国文化財への指定・選定や所有者・地元住民と協働してつくりあげる各種計画の策定など必要な作業を着実に進め、地域の実情を的確に把握したうえで必要な支援策に積極的に取り組むよう強く要望するとともに、本県議会としても、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界文化遺産へ推薦、登録されるよう、県当局をはじめ県民と一体となって全力を尽くすものである。

 

以上、決議する。

平成23年2月23日                           長 崎 県 議 会

/////////////////////////////////////////////////////////////////

地元銀行による世界遺産登録応援定期(+0.1%の金利)によって県民意識の醸成応援や、しおり、カレンダーの配布等、様々な取り組みが官民によって進められています。

私たちは、構成資産の中心でもある、大浦天主堂を訪れました。

幕府が開国して欧米5か国との修好条約が結ばれ、長崎港に外国人居留地が形成され、日本最古の教会堂が建設されました。これが大浦天主堂です。ローマ教皇により1862年に聖人に列せられた西坂の26人の殉教者に献じられました。1865年3月、浦上地区の潜伏キリシタンが聖堂を訪れ、プティジャン神父に信仰を告白した出来事は、「信徒発見」と呼ばれ、弾圧の中、250年も潜伏しながらキリストの教えを継承してきた日本人がいることは、驚きと感動をもって当時のヨーロッパに伝えられ、世界宗教史上の奇跡とされています。

20130206-15

信仰の自由を得た各地の信徒は、この後、潜伏してきたそれぞれの集落に教会堂を建設していったのです。

福江島にある堂崎天主堂は、道の奥に、ひっそりと穏やかに佇んでいました。

20130206-16

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)