平成22年第264回定例会

民主党会派の渋谷です。

追加提出議案知事説明要旨「エーアイエス株式会社の自己破産申し立てについて」の知事報告についてお伺いいたします。

まず始めに、クリスタルバレイ構想についてです。

クリスタルバレイ構想の一環である六ヶ所工業用水道に関わる議案第24号が11月29日、午後6時半頃、先議議案として採決されました。

ところが、その翌日、マスコミ報道によって、クリスタルバレイ構想の中核であるエーアイエスの自己破産申し立てを知ったのであります。

本来であれば、採決の前に知っていなければならない重要な事案であること、また、クリスタルバレイ構想の中核企業でありながら、自己破産申し立てをするまで全く分からなかった事、そして、先議議案の採決の日という、あまりのタイミングの良さに、私は、驚きとショックで、この報道にわが耳を疑いました。

なぜ、事前に対策が打てなかったのか、情報を得る事ができなかったのか、忸怩たる思いであります。県当局と県議会は、この問題解決のために、真摯に、そして、公正公平に立ち向かっていかなくてはなりません。

もはや、県が何度も繰り返していた、今年度末までに、クリスタルバレイの見直しなどといっている場合ではなく、解雇された方々、収入の89%をエーアイエスに依存する六ヶ所工業用水道事業、そして、破産申し立てによる県関係の負担、関係取引会社の連鎖倒産など、早急な対策が必要であります。

県が推進している「クリスタルバレイ構想」の中心は、エーアイエス株式会社と東北デバイス株式会社の2社であります。

東北デバイスは、去る7月2日に、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てをしました。平成18年3月に有機ELパネルの生産を開始してから、わずか4年のことでした。この間、総額、約5億8千万円もの補助金、債務保証、投資が行われております。

そして、今回のエーアイエスの自己破産申し立てであります。

負債総額57億7300万円。県が抱える債務保証残高は約20億円となっております。

中核である2社が次々と破綻し、奇しくも、先の質疑で、蝦名副知事が自らの責任と、構想の失敗を認めたことからも、「クリスタルバレイ構想」の本質的な問題を指摘せざるを得ないのであります。

さて、青森県の「クリスタルバレイ構想」を考えるとき、昨年1月に、約60億円近い負債を抱え、民事再生法の適用を申請した液晶関連企業であるアンデス電気株式会社と、蛯名副知事を抜きには語れないのであります。

まず、エーアイエスの花田代表取締役社長は、元県職員として、中小企業診断士の資格を持ち、県内の中小製造業を中心に、延べ900社の企業診断指導業務に従事、商工労働部に所属し、商工労働部商工政策課課長補佐の時、40歳代で退職、平成9年に、アンデス電気株式会社取締役経営企画本部長に就任しました。そして、平成12年より、エーアイエス株式会社代表取締役に就任したのであります。

エーアイエス株式会社の株主構成は、次のとおりです。

あおもりクリエイトファンド投資事業有限責任組合を除けば、アンデス電気が19.35%で筆頭株主です。エーアイエス社長の9.68%を合わせると約29%となります。

以下、「クリスタルバレイ構想」が策定された経緯について時系列によって検証いたします。

クリスタルバレイ構想は、平成11年12月25日。青森県庁関係各位に向け、アンデス電気の安田社長が「むつ小川原蘇生について(私案)」と題する提案書を提出した時から始まりました。その主なる内容は、

3ヵ月後の、翌平成12年3月6日。当時の木村知事に、今度は、「むつ小川原の明日の産業を考える会」の発起人アンデス電気安田社長より、「むつ小川原地域における新たな産業振興策の展開について」と題した要望書が提出され、液晶産業をむつ小川原地域に集積させることを提案。

この時、むつ小川原の明日の産業を考える会には、既に、

が参加しておりました。

平成12年度には、約20名の「クリスタルバレイ構想」検討委員会が発足し、安田社長も委員として参加。④計5回の検討委員会開催が予定。

要望書が提出されてから、3ヵ月後、平成12年6月、日本システム開発研究所による青森県「クリスタルバレイ構想」報告書が提出。

翌月の7月、僅か、2回の検討委員会を経て、「クリスタルバレイ構想検討委員会中間提言」が知事に提出。

ここで正式に、企業の新規投資に対する思い切った助成措置として、オーダーメイド型貸し工場制度の創設と安定した工業用水の確保(後の六ヶ所工業用水道)が提案されました。

この提案から、2ヵ月後の9月県議会で、オーダーメイド型貸し工場建設のための、約89億円に上る損失補償が議決。

同月、25日。エーアイエス株式会社設立され、アンデス電気から花田社長が就任。

10月には、オーダーメイド型貸し工場が着工。

明けて平成13年3月、5回の検討委員会を経て、「クリスタルバレイ構想」が提出されました。検討委員会の最終報告を待たずに、オーダーメイド型貸し工場は、進められていったのであります。

同年5月30日、オーダーメイド型貸し工場の損失補償契約が、県と地銀2行との間で締結。

そして、7月、オーダーメイド型貸し工場が完成し、エーアイエスが操業を開始しました。

翌、平成14年から高度化資金貸し付けが、八戸企業団地を通して、実質、アンデス電気に投入され始めます。

平成14年2月、約4億8000万円

平成15年3月、約3億円

平成17年3月、約4億8000万円

そしてこれらの返済が始まる前に、同年12月約51億円もの資金が結果的にアンデス電気に投入されたのです。

アンデス電気は、このクリスタルバレイ構想を作り上げ、自らが液晶産業の旗手として活躍し、アンデス電気の破綻と共に、クリスタルバレイ構想も破綻したのではないのでしょうか。

クリスタルバレイ構想の問題は、1企業の私案から端を発した構想が、行政を巻き込み、企業と行政が2人三脚で進み、県としていつの間にか身の丈を超えたリスクをとってしまったということであります。

構想の策定から、見直しの時まで、常に、利害関係者が決定に関わっていることによって、冷静な判断ができなかったということではないでしょうか。

平成12年6月に、日本システム開発研究所から提出された「青森県クリスタルバレイ構想」報告書には、多額の投資を伴う液晶産業に参入しているシャープ、NEC、東芝を始めとする国内メーカーの現状と、海外勢の台頭が詳細に記されており、液晶産業の問題点が、次のように指摘されております。

まず、クリスタルサイクルといわれるように、需給のサイクルがめまぐるしく変化し、経営が不安定。

急激な市場価格の低下を繰り返しており、利益が出し難い。投資リスクが高い。

急激に成長している分野なため、技術者が不足。

しかし、この報告書の3ヵ月後には、検討委員会の最終報告書を待たず、オーダーメイド型貸し工場の建設が決定されたのであります。最初から、「クリスタルバレイ構想」推進を前提に進められてきたのではないでしょうか。そして、構想には、安田社長と蝦名副知事が深く関わってきたのであります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)